PS5






西川善司の3DGE:無茶を承知で「PS5」の姿を予想してみる。CPUは大幅に性能向上するがレイトレ対応GPUはダイサイズが問題に - 4Gamer.net

「PlayStation 4」(以下,PS4)が正式発表となった直後である2013年2月に,筆者は,後に「PlayStation 4 Pro」(以下,PS4 Pro)と呼ばれることになる性能向上版PS4の登場を予想する記事を書いた。
 実のところあの記事は,掲載後には相当な物議を呼んだと聞くが,無理もない。後々聞いた話では,「誰かが西川善司にPS4 Proの計画をもらしたのか?」と,当時のSony Computer Entertainment(以下 SCE,現Sony Interactive Entertainment)の内部では犯人捜しがあったとか(笑)。

(中略)
CPU
 Wiredの記事では,「PS5ではZen 2コアベースの8コアCPUが載る」と書かれていた。PS4世代もCPUコア数は8基なので,数は同じだ。しかし,Zenマイクロアーキテクチャは,Simultaneous Multi Threading(同時マルチスレッディング,以下 SMT)に対応しているので,PS5では同じ8コアであっても,8コア16スレッドで動作できる。
 つまり,アーキテクチャの刷新と動作クロックの向上,SMT対応の相乗効果が期待できるので,PS5のCPU性能は,PS4と比べてかなり上がりそうである。

(中略)

PS4:8 FLOPS×1.6GHz=約102.4 GFLOPS
PS4 Pro:8 FLOPS×2.13GHz=約136.3 GFLOPS

Zen 2世代になると,SIMD型浮動小数点演算器が256bit化されるという。つまり,1クロックあたりの演算性能は32 FLOPSとなる。仮に,動作クロックが3~4GHzになると仮定した場合

PS5:32 FLOPS×3~4GHz=約768~1024 GFLOPS

となるわけで,7.4~10倍くらいの浮動小数点演算性能がありそうだという想定が成り立つ。

GPU
PS4のGPU性能は1.84 TFLOPSで,当時はリアルなフルHD対応がアピールポイントの1つでもあった。これを基準に考えると,4倍の解像度になる4Kレンダリングには,単純計算で7.36 TFLOPSが必要になる。しかし,PS4 ProのGPU性能は4.2 TFLOPSで,7.36 TFLOPSの57%程度の性能だった(関連記事)。
 この法則が次世代でも適用できるなら,PS5のGPU性能は16.7 TFLOPS(=29.44TFLOPS×57%)という試算になる。

 ただ,この性能を7nmプロセスで実現するのは,ちょっと難しい。
 世界初の7nmプロセス採用GPUとなった「Radeon VII」の場合,ダイサイズ(※半導体自体のサイズ)は331mm2と,かなり大きい。Naviも同世代か改良版のプロセスであろうことから,仮に同等の性能であれば,ダイサイズもあまり変わらないはずだ。

8K対応とは言うものの,8K先進国であるはずの日本ですら,8K対応テレビはまだまだ普及期には遠い状況だ(関連記事)。PS5は,今のところ8Kにそれほど関心がない世界市場もターゲットなので,実際のGPU性能は,16.7TFLOPSという先の試算を下回るだろうと筆者は考えている。現実的には,「Radeon VII」と同等の13.8 TFLOPS前後に落ち着くのではなかろうか。
 ひとまず確実に言えることは,リアル4Kレンダリングに必要な7.36TFLOPSは超えてくるだろうということ程度だ。

メモリ
さて,Navi世代のGPUは,現行のアーキテクチャであるVega世代の後継であるため,グラフィックスメモリシステムは,「High Bandwidth Memory」(以下,HBM)の搭載を前提とした「High Bandwidth Cache」(以下,HBC)と呼ばれるメモリシステムを採用する可能性がある。

だからといって,PS5の全メモリをHBMにするとは,筆者には思えない。HBMを8GB,GDDR6も8GBといった異種混合型のメモリシステムとする可能性が高いのではないだろうか。
 この構成は,PS3のメモリアーキテクチャを思い出させる。ソニーはPS3において,CPUの「Cell Broadband Engine」(以下,Cell)と接続するメインメモリに,当時としては高速なRambusのXDR DRAMを容量256MB,GPU側のグラフィックスメモリには,こちらも容量256MBのGDDR3 SDRAMを搭載するという異種混合型メモリシステムを採用していたのだ。メモリ帯域幅に優れたXDR DRAMをGPUではなくCPU側に採用したのは,Cellが内蔵する8基(※実動は7基)の128bit SIMD型ベクトルRISCプロセッサ「Synergistic Processor Element」(SPE)による活用を見込んでのものだったと聞いている。
 もちろん,PS5でも無難にGDDR6を16GB搭載という妥協的な構成を取るのはあり得る話だ。しかし筆者は,PS3に先祖返りしたような異種混合型メモリシステムをPS5で採用する可能性は低くないと考える。

SSD
Wiredの記事でCerny氏は,PS5がSSDを標準搭載することを認めている。ただ,SSD採用の説明でCerny氏は,興味深い一言を付け加えていた。それは「未フォーマット状態での読み込み速度を重視して,SSDを活用する」という発言だ。
 これはつまり,PS5は,SSDの全体,あるいは一部を,ゲームデータ保存用のファイルシステムとは異なる用途に利用することを意味する。すなわち,PS5では,SSDをキャッシュ用途で利用すると言う意味だと解釈できるだろう。

 現時点で選択可能な据え置き型ゲーム機向けソリューションとして,これはとても現実的な選択肢である。購入したゲームすべてをSSDに保存しておこうとすると,大容量のSSDが必要となり,それはとてもコストがかかるからだ。
 よって,従来のPSファミリー同様に,PS5もメインストレージには大容量HDDを採用して,ユーザーによるHDDの交換を可能とするのではないだろうか。一方,標準搭載するSSDは,ユーザーによる交換を考慮しないもの――たとえばサブ基板に直付け――となるだろう。


他にも光学ドライブや音響システムについても言及しています。Cerny氏も特殊なSSDを採用するとは言及していますが、500GBでも相当なコストになるはず。実際にゲームに使う数十GB分だけをSSDでキャッシュ的に使うというのは現実的でしょう。