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都内で開催された「ICO」「ワンダと巨像」プレミアムイベントに参加しましたのでレポートします。参加者全員に対するトークセッションに加え、ブロガー対象の質疑応答もありましたのでご紹介。上田さんに色々と聞いてみたよ。
※トークセッション
トークセッションには本作品のクリエイターである上田文人氏、そして「SIREN」シリーズや現在鋭意開発中のPS Vita用「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」を手がける外山圭一郎氏がモデレーターとして出席されました。
セッション内容については同イベントに参加された4Gamer様の記事が殆ど網羅されていますのでご紹介。余談ですが、司会の方が「GRAVITY DAZE~」をサブタイトルまできっちりと読んでいたのが印象的でした。
トークセッションで私は「優秀なゲームクリエイターは優秀な演出家でもある」と再認識しました。上田氏の作品を見ていると、ゲーム中のシーン一つ一つにメッセージや意図が込められて丹念に制作されている事が伝わってくるのです。
現在展開されている「Great Scene Sharing」キャンペーンのような企画が実現するのも、前述した上田氏の優れた演出家としての力量によるものでしょう。プレイした人同士がゲームショットを見て「あーこれこれ、このシーンだよ」と共感できるシーンが随所に盛り込まれたゲームはさほど多くありません。更にそのシーンがプレイアブルな状態なら尚更のことです。
※質疑応答
ブロガー質疑応答では上田文人氏及び外山圭一郎氏にご参加いただきました。
Q:今回のセッションや過去のインタビューにおいても、PS2というハードウェアの制限の中で演出等を工夫されてるとありましたが、例えば「ICO」や「ワンダと巨像」を制作する段階でPS3というハードウェアがあったとしましたら、両作品は全く違ったものになったのでしょうか?
A:一から作るとなると違ったものになるでしょう。その時のハードウェアに合わせて都度選択をする事になりますから。ハードウェアの性能が上がったとしても別の制限が出てきますので、ベストの選択を取りながらゲームを制作しています。
Q:今回のHDリマスターにおいて、オリジナルから手を加えたことはありますか?
A:高解像度に対応したテクスチャや3D対応等、そしてゲームの進行には関係ないのですが、プレイヤーが遊びやすくなる設定が若干加えられています。
Q:HDリマスター版をプレイしていて、PS2のオリジナルより「ここはいいな」と思う部分はありますか?
A:「ICO」は元々PS2でも比較的解像度が低いゲームでしたので今回のリメイクによりフルHDになっています、「ワンダと巨像」は解像度だけではなくフレームレートが安定しているところが大きいですね。
Q:PS2版とPS3版どちらがお好きですか?
A:私自身が制作したゲームをニュートラルに見るようになるのはもっと先かなと思っています。どうしても「こうすれば良かったかな」という部分が目に付いてしまいますので。
Q:SD解像度で制作していた作品がHDとなり、世界観の見え方が違ってくる事はどのようにお考えでしょうか?
A:SDでぼかしていた部分がはっきり見える事のマイナスに対し、最初は心配していましたが、実際に動かしてみるとそうでも無かったです。
Q:上田さんのゲームを見ていると、演出の一つ一つに心情であったり意志が込められていますし、同時に必要以上に言葉に頼っていないとも感じます。このあたりが日本のみならず世界でも高い評価を得ている要因の一つとも考えていますが、「世界」を意識してゲームを制作されているという部分でもあるのでしょうか?
A:「ICO」や「ワンダと巨像」では専用の言語を使っていますが、それはその世界に「リアリティ」を持たせるためです。言葉を多用しないのは「手を引っ張る」「名前を呼ぶ」といったゲームアクションの行為そのものの説得力が薄れてしまう為ですね。もし、この先AIがものすごく進歩すれば、今度は言葉を多用したゲームを作ることもあるかも知れません。
Q:リマスターの制作期間を教えてください。
A:具体的な制作期間はお答えできないのですが、ここまで短い時間でゲームを制作したことは今までありません。リマスターを担当した海外及び国内のスタッフが頑張ってくれました。
Q:リメイクはお考えでは無かったのでしょうか?
A:今は考えなかったですね。トリコを作っていますし、その次に作りたいタイトルのアイデアもなんとなくですがあります。更にその先ならばリメイクもあるかもですし、元々オンライン対応で考えていた「ワンダと巨像」を本来の形で制作することもあるかも知れません。
※実際にプレイしました
会場では実際に両タイトルを試遊しました。今更ゲーム内容や魅力について説明する必要は無いと思いますので、HDリマスターの効果の程を中心に書きたいと思います。
「ICO」と「ワンダと巨像」のオリジナルはPS2用の作品という事もあり、PS3リマスターされる際にポリゴンがアップスケールされるだけではなく、テクスチャも高解像度に対応した美麗なものに張り替えられています。
勿論PS3ネイティブの作品と比べると見劣りする部分が多いのも事実ですが、両作品が持つ空気や光の柔らかさ、幻想的でありながら地に足が付いているしっかりとした世界観がPS3版でも維持されています。そして随所でシャープさも感じさせるグラフィックの落としどころは絶妙だと感じました。
また、別会場では3D立体視のデモが行われていました。3D立体視の効果に派手さは無いものの、奥行き感が広がることでゲームプレイにほんの少し臨場感や迫力を付与します。3Dテレビ所有者は是非とも「ICO」「ワンダと巨像」の3D立体視モードでゲームを楽しんで欲しいですね。私はパナの3Dプラズマテレビ所有者ですが、11月に発売されるSonyの新型HMDで両タイトルをプレイしたい気分でいっぱいです。
※イベントの感想
実に興味深いイベントでした。上田氏及び外山氏によるゲーム制作に関わる深い話をたっぷりと聞けましたし、海外でも著名なクリエイターの一人である上田文人氏に直接質問する事が出来たのも嬉しかったですね。
上田氏はブロガー対象の質疑応答で、現在鋭意開発中の「人喰いの大鷲トリコ」のさらなる「先」についてもアイデアがあると語っていました。その時がいつになるのかは全く予想も付きませんが、何ともわくわくする話ではありませんか。
トークセッションや質疑応答を経て改めて感じたのが「上田文人氏とSCEとの出会いはまさに僥倖だった」という事です。
ゲーム制作においてインタラクティブ要素と非インタラクティブ要素のコンフリクトは長年の課題のはずですが、ここ最近の国内外のゲームを見ていると、そのあたりの問題を解決しようとする動きが無いのです。むしろ、ストーリー性が希薄なドンパチ中心のゲームになるか、非インタラクティブなムービーシーンを盛り込んだゲームの両極化が進行しつつあると感じています。
勿論それらが悪いという訳ではありませんが、上田氏の作品のようにゲームプレイの要所要所に物語やメッセージを込めようとする職人のような制作と比べると「開発スパンが短く済み、分業もやりやすい」のだろうなぁとは想像できます。ゲームファンが多様化され、むしろターゲットを絞りやすくなったという事もあるのでしょう。
ただ、そういったゲーム工場から作り出されるゲームでは上田氏のような才能が世界で評価されることは無かったでしょう。SCE内製タイトルのバジェットは公開されない事もあって不明ですが、少なくとも納期に関して他ソフトハウスよりも品質重視であることは疑いようがありません。
日本が誇るクリエイター上田文人氏のゲーム作りの原点、そして出世作である「ICO」と「ワンダと巨像」が美しさと懐かしさを兼ねたHDリマスター版として2011年9月22日に発売されます。
既にプレイ済みの方はHDリマスターの美しさに驚きながらも変わらぬ操作感やゲーム性に安心することでしょうし、未プレイの方はSCEを代表する名作の2本を高解像度・高フレームレートで最初から楽しむことが出来るのです。両作品とも、できる限り多くのPS3ユーザに手にとってじっくりと遊んで貰いたいと感じさせる出来映えだった事は間違いありません。
トークセッションには本作品のクリエイターである上田文人氏、そして「SIREN」シリーズや現在鋭意開発中のPS Vita用「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」を手がける外山圭一郎氏がモデレーターとして出席されました。
セッション内容については同イベントに参加された4Gamer様の記事が殆ど網羅されていますのでご紹介。余談ですが、司会の方が「GRAVITY DAZE~」をサブタイトルまできっちりと読んでいたのが印象的でした。
4Gamer.net ― 「ICO」での崩れる橋のシーンは,「この先も手を繋いでくださいね」というメッセージ。上田文人氏も登場した「ICO」「ワンダと巨像」プレミアムイベントをレポート
トークセッションで私は「優秀なゲームクリエイターは優秀な演出家でもある」と再認識しました。上田氏の作品を見ていると、ゲーム中のシーン一つ一つにメッセージや意図が込められて丹念に制作されている事が伝わってくるのです。
現在展開されている「Great Scene Sharing」キャンペーンのような企画が実現するのも、前述した上田氏の優れた演出家としての力量によるものでしょう。プレイした人同士がゲームショットを見て「あーこれこれ、このシーンだよ」と共感できるシーンが随所に盛り込まれたゲームはさほど多くありません。更にそのシーンがプレイアブルな状態なら尚更のことです。
※質疑応答
ブロガー質疑応答では上田文人氏及び外山圭一郎氏にご参加いただきました。
Q:今回のセッションや過去のインタビューにおいても、PS2というハードウェアの制限の中で演出等を工夫されてるとありましたが、例えば「ICO」や「ワンダと巨像」を制作する段階でPS3というハードウェアがあったとしましたら、両作品は全く違ったものになったのでしょうか?
A:一から作るとなると違ったものになるでしょう。その時のハードウェアに合わせて都度選択をする事になりますから。ハードウェアの性能が上がったとしても別の制限が出てきますので、ベストの選択を取りながらゲームを制作しています。
Q:今回のHDリマスターにおいて、オリジナルから手を加えたことはありますか?
A:高解像度に対応したテクスチャや3D対応等、そしてゲームの進行には関係ないのですが、プレイヤーが遊びやすくなる設定が若干加えられています。
Q:HDリマスター版をプレイしていて、PS2のオリジナルより「ここはいいな」と思う部分はありますか?
A:「ICO」は元々PS2でも比較的解像度が低いゲームでしたので今回のリメイクによりフルHDになっています、「ワンダと巨像」は解像度だけではなくフレームレートが安定しているところが大きいですね。
Q:PS2版とPS3版どちらがお好きですか?
A:私自身が制作したゲームをニュートラルに見るようになるのはもっと先かなと思っています。どうしても「こうすれば良かったかな」という部分が目に付いてしまいますので。
Q:SD解像度で制作していた作品がHDとなり、世界観の見え方が違ってくる事はどのようにお考えでしょうか?
A:SDでぼかしていた部分がはっきり見える事のマイナスに対し、最初は心配していましたが、実際に動かしてみるとそうでも無かったです。
Q:上田さんのゲームを見ていると、演出の一つ一つに心情であったり意志が込められていますし、同時に必要以上に言葉に頼っていないとも感じます。このあたりが日本のみならず世界でも高い評価を得ている要因の一つとも考えていますが、「世界」を意識してゲームを制作されているという部分でもあるのでしょうか?
A:「ICO」や「ワンダと巨像」では専用の言語を使っていますが、それはその世界に「リアリティ」を持たせるためです。言葉を多用しないのは「手を引っ張る」「名前を呼ぶ」といったゲームアクションの行為そのものの説得力が薄れてしまう為ですね。もし、この先AIがものすごく進歩すれば、今度は言葉を多用したゲームを作ることもあるかも知れません。
Q:リマスターの制作期間を教えてください。
A:具体的な制作期間はお答えできないのですが、ここまで短い時間でゲームを制作したことは今までありません。リマスターを担当した海外及び国内のスタッフが頑張ってくれました。
Q:リメイクはお考えでは無かったのでしょうか?
A:今は考えなかったですね。トリコを作っていますし、その次に作りたいタイトルのアイデアもなんとなくですがあります。更にその先ならばリメイクもあるかもですし、元々オンライン対応で考えていた「ワンダと巨像」を本来の形で制作することもあるかも知れません。
※実際にプレイしました
会場では実際に両タイトルを試遊しました。今更ゲーム内容や魅力について説明する必要は無いと思いますので、HDリマスターの効果の程を中心に書きたいと思います。
「ICO」と「ワンダと巨像」のオリジナルはPS2用の作品という事もあり、PS3リマスターされる際にポリゴンがアップスケールされるだけではなく、テクスチャも高解像度に対応した美麗なものに張り替えられています。
勿論PS3ネイティブの作品と比べると見劣りする部分が多いのも事実ですが、両作品が持つ空気や光の柔らかさ、幻想的でありながら地に足が付いているしっかりとした世界観がPS3版でも維持されています。そして随所でシャープさも感じさせるグラフィックの落としどころは絶妙だと感じました。
また、別会場では3D立体視のデモが行われていました。3D立体視の効果に派手さは無いものの、奥行き感が広がることでゲームプレイにほんの少し臨場感や迫力を付与します。3Dテレビ所有者は是非とも「ICO」「ワンダと巨像」の3D立体視モードでゲームを楽しんで欲しいですね。私はパナの3Dプラズマテレビ所有者ですが、11月に発売されるSonyの新型HMDで両タイトルをプレイしたい気分でいっぱいです。
※イベントの感想
実に興味深いイベントでした。上田氏及び外山氏によるゲーム制作に関わる深い話をたっぷりと聞けましたし、海外でも著名なクリエイターの一人である上田文人氏に直接質問する事が出来たのも嬉しかったですね。
上田氏はブロガー対象の質疑応答で、現在鋭意開発中の「人喰いの大鷲トリコ」のさらなる「先」についてもアイデアがあると語っていました。その時がいつになるのかは全く予想も付きませんが、何ともわくわくする話ではありませんか。
トークセッションや質疑応答を経て改めて感じたのが「上田文人氏とSCEとの出会いはまさに僥倖だった」という事です。
ゲーム制作においてインタラクティブ要素と非インタラクティブ要素のコンフリクトは長年の課題のはずですが、ここ最近の国内外のゲームを見ていると、そのあたりの問題を解決しようとする動きが無いのです。むしろ、ストーリー性が希薄なドンパチ中心のゲームになるか、非インタラクティブなムービーシーンを盛り込んだゲームの両極化が進行しつつあると感じています。
勿論それらが悪いという訳ではありませんが、上田氏の作品のようにゲームプレイの要所要所に物語やメッセージを込めようとする職人のような制作と比べると「開発スパンが短く済み、分業もやりやすい」のだろうなぁとは想像できます。ゲームファンが多様化され、むしろターゲットを絞りやすくなったという事もあるのでしょう。
ただ、そういったゲーム工場から作り出されるゲームでは上田氏のような才能が世界で評価されることは無かったでしょう。SCE内製タイトルのバジェットは公開されない事もあって不明ですが、少なくとも納期に関して他ソフトハウスよりも品質重視であることは疑いようがありません。
日本が誇るクリエイター上田文人氏のゲーム作りの原点、そして出世作である「ICO」と「ワンダと巨像」が美しさと懐かしさを兼ねたHDリマスター版として2011年9月22日に発売されます。
既にプレイ済みの方はHDリマスターの美しさに驚きながらも変わらぬ操作感やゲーム性に安心することでしょうし、未プレイの方はSCEを代表する名作の2本を高解像度・高フレームレートで最初から楽しむことが出来るのです。両作品とも、できる限り多くのPS3ユーザに手にとってじっくりと遊んで貰いたいと感じさせる出来映えだった事は間違いありません。
ICO ソニー・コンピュータエンタテインメント 2011-09-22 by G-Tools |
ワンダと巨像 ソニー・コンピュータエンタテインメント 2011-09-22 by G-Tools |